航空宇宙部品の品質を左右するレーザー切断の熱影響とは

航空宇宙産業の製造分野では、ファイバーレーザーの登場により切断技術が大きく進化しました。
その結果、レーザー切断でありながら、非熱加工法に匹敵する高い品質を実現しています。

最新のファイバーレーザーは、熱影響部(HAZ)を最小限に抑えながら高品質な切断が可能です。
これにより、材料の脆化を大幅に低減するとともに、
従来の機械加工や非熱加工法を上回るスピードで部品を加工できます。

なぜ航空宇宙製造に5軸レーザー切断が選ばれるのか?

技術は常に、「不可能を可能にする」方向へ進化しています。
なかでも、航空宇宙産業は、妥協を決して許さない分野です。
明日の技術革新を切り拓くのは、今日の限界に挑み続ける最先端技術にほかなりません。

こうした進歩の根底には、
アルミニウム、クロム、鉄、炭素、チタン、ニッケル、コバルトといった
基本的な金属元素の存在があります。

レーザー切断の登場により、製造現場は従来のハードツーリングから解放されました。
しかし初期のレーザー切断は、コストや生産性の制約から、用途が限られていたのも事実です。
※ハードツーリング:特定の製品を大量・高精度に加工するために作られた「専用の治具・金型・工具」のこと

それでも技術の進化とともに、レーザー切断は大きく発展しました。
現在では、航空・宇宙産業に欠かせない加工技術として確固たる地位を築いています。

レーザー切断は、高精度・高品質・高い再現性を実現しながら、
スクラップの削減、工程の最適化、コスト低減に大きく貢献しています。
なかでも最大の変革のひとつが、熱影響(HAZ)の大幅な低減です。

本記事では、
アルミニウム、チタン、ニッケルなどの特殊合金を、最小限の熱影響部で切断するための方法と技術について解説します。

熱影響(HAZ)はなぜ発生するの?

熱影響(HAZ)は、あらゆる熱切断加工において発生する現象です。
放電加工(EDM)のような比較的非熱的な加工方法であっても、
航空宇宙用途では許容されないほどごく薄いHAZ
が生じる場合があります。

HAZは、切断部周辺に伝達される熱エネルギー量によって発生します。
この熱の影響により、切断面が脆くなって亀裂を誘発したり、
部品の疲労強度を低下させたりする原因となります。

その結果、部品寿命を正確に予測することが難しくなります。

HAZの大きさは、
材料特性、レーザー光源、加工条件、アシストガスといった要素が
相互に影響し合うことで決まります。

HAZが発生すると、その影響を受けた層を機械的に除去する二次工程が必要となります。
とくに板厚が増すほど、作業工数やコストは大きく上昇します。
こうした課題が、航空宇宙分野における加工技術の発展を長年にわたり制約してきました。

アルミニウム合金切断の進化

アルミニウム合金は、軽量でありながら高い強度を持ち、耐食性や耐UV性にも優れることから、
航空宇宙部品において最も広く使用されてきた金属のひとつです。

しかし、初期の産業用レーザーではCO₂レーザー光源が主流であり、
アルミニウムに対する吸収率が低く、出力にも限界がありました。
そのため、当初はアルミ部品のレーザー切断は現実的ではありませんでした。

この課題を解決したのが、現代のファイバーレーザー技術です。

ファイバーレーザーは、アルミニウム合金に適した波長を持ち、
反射エネルギーが少なく、効率的な切断を可能にします。
さらに、パルスモードで動作させることで
アルミの高い熱伝導性による影響を抑え、周囲への熱拡散を最小限に抑えます。

その結果、ファイバーレーザーはアルミ合金切断に最適な光源となり、
熱影響部(HAZ)を大幅に低減しながら、高精度・高品質な切断を実現します。

ダイカスト部品のレーザー切断

高精度レーザー切断を実現する
ビーム品質とフォーカス制御

HAZを抑えるためのもう一つの重要な要素が、レーザービームそのものの品質です。
これは、レーザー出力が軸方向にどれだけ高密度に集中しているかを示す指標で、
理想的にはガウス分布に近いエネルギー分布が求められます。
※ガウス分布:ビーム中心にエネルギーが集中し、安定した高品質切断を可能にするエネルギー分布

ビーム品質が高いほど、照射強度は安定し、より優れた切断性能と高い再現性を実現できます。

たとえば、LT-FREE 5軸レーザー切断システム(2〜5kWクラス)に搭載されている
最新のファイバーレーザーは、非常に低いビームパラメータ積(BPP)を実現しており、
高精度で安定した切断品質を誇ります。さらに、自動フォーカス調整システムにより、
材料の厚みや種類に応じてエネルギー分布を最適化します。

BLM GROUPの5軸レーザー切断機に搭載されているアクティブフォーカス機能は、
押出成形品、ダイカスト部品、曲げ加工部品などの切断において、
高精度を維持しながらHAZを最小限に抑えるために欠かせない技術です。

品質と効率を両立する次世代アシストガス制御

アシストガスの選択は、HAZ(熱影響部)を抑制するうえで極めて重要な要素です。

たとえば酸素を使用すると、切断中に強い酸化反応による発熱が起こり、
材料を効率よく溶融させることができます。
しかし、チタンやニッケル合金では反応が過剰になりやすく、
切断品質の低下やHAZの拡大、さらには酸化物の混入を招く原因となります。

そのため、これらの材料では、
窒素やアルゴンといった不活性ガスの使用が不可欠です。
不活性ガスを用いることで酸化反応を抑制し、
高品質な切断面と低HAZを同時に実現できます。

また近年では、圧縮空気をアシストガスとして使用する手法も注目されています。
酸化反応を抑えつつ、コスト面でも優れた選択肢となる点が特長です。

BLM GROUPのLT-FREEシステムには、アクティブエアーカッティング機能が搭載されており、
用途や自動化レベルに応じて最適なガスを自動選択します。
これにより、加工効率と切断品質の両立が可能になります。

航空宇宙用燃料ライン

航空宇宙製造の未来を切り拓く
5軸レーザー切断技術

ここまでご紹介してきたように、レーザー技術の進化は航空宇宙製造に新たな時代をもたらしました。
特にファイバーレーザーの発展により、航空部品に求められる薄肉構造や複雑形状への対応が可能になっています。

こうした加工を実現するためには、三次元的に自由な動きを持つレーザーヘッドが不可欠です。
そのニーズに応える技術が、5軸レーザー切断です。

BLM GROUPのLT-FREE 5軸レーザー切断システムは、
航空宇宙製造におけるHAZ低減に効果的なソリューションを提供します。
曲げパイプ、ハイドロフォーミング部品、ダイカスト部品など、
複雑な三次元形状の部品を高精度に切断し、圧倒的な品質を実現します。

進化を続ける航空宇宙業界において、
LT-FREEは自動化と生産性向上を両立する重要な装置であり、
次世代製造の中核を担う存在です。

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